いちばん役立つ介護用品は?

それは「私物」です。
私物に囲まれていないと認知症の人は落ち着きません
認知症のことを書いた本には、さまざまな周辺症状が記載されていますが、そのなかに「いらない物を自分の周囲に集める」という項目が入っていることがあります。家族や他人からすると、役に立たないもの、ゴミ同然の物を捨てずにためているのですから、確かに問題行動に見えるかもしれません。しかし、責めたり勝手に片付けたりすると、認知症が悪化します。
 いらない物を集める行為は、大別するとティッシュペーパーなど特定の物を新たに集める行為と、昔の物を捨てない行為の2種類です。前者は、それを身近に置くことで安心感を抱けるのですから、危険がない限り見守りましょう。後者は、他人にとってはガラクタでも、本人にとっては過去が刻まれた大切な思いでの品なのです。勝手に捨てたりせず、思い出の中で生活してもらいましょう。
 認知症のお年寄りが集める物や捨てずに取っておく物は、ときとして介護の宝となります。そうした物への執着を大切にすると、お年寄りが落ち着いてくれるからです。「私物は一番役立つ介護用品である」という言葉には、そんな意味が込められています。
 病院に入院すると私物の持ち込みが制限されますが、家族の写真や記念品などを大切にしている物だけでもベッドの周りに置かせてもらいましょう。入所施設であれば、私物の持ち込みは欠かせません。思い出の品はもちろん、使い慣れた家具や生活用品も持ち込んで、なるべくその人らしい個性的な空間をつくりましょう、
 施設には「私物が多いと誰かが持って行ってトラブルになる」と、持ち込みを制限する人がいますが、ある程度私物に囲まれていなければ認知症の人は落ち着きません。私物への寛容さは、認知症のケアがわかっているかいないかを示す大切なバロメーターです。